桜骨・2





★★★


「大体なぁ、聞いてんのかよ。お前!」


目の前で黙し、微動だにせぬ男に向かって、魔地は懸命に宴のあり方を説い
ていた。


「歌うなっていうけどさ、花見だぜ? 花見と言やぁカラオケじゃねぇか。
 それをだな、敏郎がちょっと反対したくらいでな」


男は動かない。反論さえない。そのことが酩酊しきった魔地の神経を逆撫で
する。


「前々から思ってたけどよ、お前ちょっと敏郎の言うこと聞きすぎじゃね?
 騎士道精神もアツイ友情も結構だけどよ、もうちょっと他の奴との協調っ
 てのも大事じゃねぇか? お前一応キャプテンなんだしよ」


目の前でひらつくスカーフを引っ張る。ここまで挑発されても反応なしとは。


「聞いてンのかコラ!! お前、そういう態度ならこっちにだって考えがある
 ぞ!!」


ぞろり。突如として男が緩慢な動きで手を上げた。ぐっと肩を掴まれ、魔地
は「やるかァ?」と口角をつり上げた。


「やるってンなら相手になるぜ。酒に喧嘩はつきものだもんな! 言いたい
 ことは拳で──なぁんて」


息を吸い込んで──肺が腐臭で満たされるのに気付く。花霞。土の匂い。死
者の臭い。頭の奥がじんと痛い。


「なんだ…ハーロック……?」


霞む目の前で、男が大きく口を開けた。死臭が濃くなる。肩を掴まれて、振
り解くことも出来ない。

肩にこびりつく黒土。両肩を掴まれ、迫ってくる男に魔地は眉を顰めながら
退いた。


「ハーロック…お前、まさか」


夢か? これは──酒が見せた一時の。



「お前まさか歯ぁ磨いてないんじゃないだろうなぁあぁ──ッッッ!!!」



そこだけは敏郎に似ず、綺麗好きな奴だと思っていたのに!!


「しかも手も洗ってねぇのかよ! うわ、汚ねッ、バリア! バリアだって
 このバイ菌!!」



「だぁれがバイ菌だ! バリア無効!!」



ごすぅ。即頭部に凄まじい衝撃を喰らって、魔地は木の葉のように吹っ飛ん
だ。一度地面をバウンドし、そのままゴロゴロと回転して止まる。一瞬の意
識喪失。覚醒し、身を起こしたときには既に心地良い酩酊気分はどこかに消
えてしまっていた。

重力ブーツによるハイキック。鍛え上げられた魔地の感覚は、自らに与えら
れた攻撃の正体と相手を一瞬で分析する。

蹴りの入った角度は明らかに正面の男ではない。ブレた視界を立て直し、魔
地は口内に溜まった血を吐き出した。


「──ってぇなぁハーロック!!」


「目ェ覚めたか! 魔地!!」


蹴りを繰り出した男──ハーロックはさっきまで魔地が立っていた場所に
立ち、何やら茶色い物体と格闘していた。魔地は急いで体に付いた土を払い
落として立ち上がる。不測の事態か。あんな茶色いモノ、酒宴が始まる前に
はいなかったのに。


「おい、一体何が起こって」


「ハーロック! 貴様ァ!!」


どかん。茶色い物体を倒してこちらを向いたハーロックに、思うさまタック
ルをかましたのは何故か客人たる火龍の艦長ウォーリアス・零。「どわぁ」
と受け身を取る間もなくハーロックが横倒しになる。そのまま二人はもみく
ちゃになり、わいのわいのと騒ぎ出した。何だかもう、狂ってる。

何だ。自分が酔いどれている間に一体ナニがあったのだ。魔地は混乱しなが
らも、恐る恐るくんずほぐれつの男共に近寄る。

爪先にこつんと当たるしゃれこうべ。


「な、なぁオイ。一体何が」



「死体遺棄の現行犯逮捕だ! 自白したなハーロック!!」


「だから違うって言ってるだろ! お前人のハナシ少しは聞けよ!」


「このしゃれこうべは誰のものだ! 言え! さぁきりきり白状しろ
 ──ッッ!!」


「痛い痛い痛い!! 顔面掴むな痛い! おま…てめぇ零!! 酔ってるな? 
 何でもない顔して酔ってるなお前!!」


「酔ってなどいない! 私は正気だ。しょうき……疑うと国家反逆罪で死刑
 だぞ! あーはっはっは! わたしはこっかこうむいんなのだ! お前な
 んかこうしてやる! こゥだ!!」


「いやぁーはっはっは!! い、いやこら…やめなさい! ちょっ…脇はやめ
 て脇は。脇は駄目なの! くすぐったいの!! ちょっとこら、零!! 怒る
 ぞ。本気で怒るぞ! ほーらドッカーンだ!!」


「あっはっはっは! あ──だ、だめ。そこは駄目。そこは駄目だ馬鹿。あっ、
 駄目。お腹は駄目。ダメだって言ってるのにぃ」



「……おーい……」


駄目なのはこいつらだ。魔地は早々に諦めて敏郎を探す。こんな狂気のド真
ん中で正気を保てるとしたら彼だけだろう。多分。

地面そのものが蠕動している。散る花弁が吹雪のようだ。だが、花の芳しさ
よりも死臭の方が遥かに強い。そして、この、複数の知らぬ気配。
動いているのはわかる。けれど、この気配。まるで生きているものではない
ような。


「魔地! 油断するでないど!!」


澄んだ一喝が飛んでくる。煌めく剣閃。魔地の感覚が途端に醒める。慌てて
臨戦の構えを取ると、目の前に小さな影が降りてきた。敏郎だ。刀を持たぬ
手に、ヤッタランを抱えている。


「ようやく酒が抜けたか。今は一大事の時である。お前にも戦力になって
 もらうど」


「戦力──? 一体何があったんだ?」


「寝惚けるな。見据えよ。敵は四方にいる」


刃先が花吹雪の向こうを示す。魔地は敏郎と背中合わせの位置を取って周囲
を睨めつけた。

──いる。確かに、薄紅の花弁にそぐわぬ、何か、茶色いモノが。


「生きる屍──アンデッドである」


「アンデッド……」


緩慢な動作で、こちらに向かって来る茶色い群集。地中深くから聞こえてく
るような呻き声。一層に濃さを増す死臭。

桜の木の下から次々と。朽ちた頭を上げ、骨の見えた腕で空を掻き。


死者が、蘇っている。


「どうなってるんだよ、これ」


魔地は思わず手の甲で鼻を覆う。凄まじい臭いだ。戦場にもこれほどまでに
はたち込めぬ。

これは墓だ。墓碑もなく、棺もない哀れな墓の臭い。


「俺が油断しておった。花の美しさに浮かれた所為だ。事前の調査を怠った。
 基本的な大気と地質分析──ふん、宇宙に身を置いて十余年。それだけで
 は安全と言えぬことなど、承知しておったはずなのにな」


食人星だったのだ。その一言で、魔地は全てを悟った。食人星。それは、自
ら意思を持ち、獲物を喰らう悪魔の生物。


「はン、どっかにあるとは聞いてたけどな。まさかこの星がそうだなんて」


ゆっくりと、迎撃用の糸を構える。「名前の無い星と知った時点で気付くべ
きだったのだ」敏郎が悔しそうに刃を傾けた。


「このように美しい星、真に安全であったなら宇宙ネットの観光案内に名を
 連ねていたであろう。それが無いということは、すなわち人の降りられぬ
 星を指しておるということだ。この桜花の美しさは獲物を誘き寄せるため
 の疑似餌であろう。全く、己が浅薄さには呆れたもの。俺もまだまだ思慮
 が足りぬ」


「誰も気付かなかったんだからお前の責任だけじゃないさ」


「慰めは無用。恐らく、この屍共は傀儡であろう。そして哀れな被害者だ。
 服装も性別も時代や種族間を越えて多岐に渡っておる。冒険者らしき者か
 ら、乳飲み子を抱いた女まで。恐らく、元は人の住んでおった星なのだろ
 うな」


「おかしい話じゃねぇか。食人星ってのは、生まれた直後から人を喰う習性
 があるって聞いたけどな」


「さて、眠っておったか。人を喰らえるまでに成長するのを待っておったか。
 何せ星のすることよ。余人の時間尺度など到底通用するものではない」


「なるほど、ね!」


間合いに踏み込んできたモノを胴体から両断する。だが、分断された下半身
はなおも鈍々と歩みを止めず、落ちた上半身は這いつくばってこちらに向か
う。


かたかたかた。かたかたかたかた。


舌の腐り落ちた頭が笑った。歯と歯を合わせ、自らの腐肉を食むのも構わず。



かたかたかたかた。げらげらげらげら。



それは次々に始まって。耳を覆いたくなるほどの忌まわしい哄笑に。




げらげらげらげら。げらげらげらげらげらげら。




「なんなんだよ! 嫌な音だぜ」


「頭を砕かねば歩みは止まらぬ。傀儡と言ったろう。こやつらはもう人では
 ないのだ。星に全ての養分を奪われ、自らの美しさも気高さも花に吸収さ
 れた残滓に過ぎぬ。倒せ。薙ぎ払い殲滅するのだ。それ以外に道はない」


「殲滅って言ってもよ──」


後から後から沸いてくるのだ。あたかも腐肉に集う蛆のように。その醜悪さに、
魔地は舌打ちする。


「まるで妄執の虜だ。気の毒にな」


「あぁ、気の毒であるとも。人は花にも嵐にも喩えられる。だが、それは理
 想なのだ。美しく咲き、吹き荒れ散ることの叶わぬ者は不幸なのだ。遂げ
 られぬ。それはもはや、お前の言うとおり妄執なのだよ」




げらげらげらげらげら。げらげらげらげらげらげらげら。




笑っている。だが、泣いてもいるのか。糸を振るいながら魔地は思う。泣い
ているのだ。腐り果て、命の火の費えても魂魄の留まるこの哀れな身を。


「厭なモンだな」


「気持ちの良いものではなかろうさ」


一刀の下に切り捨てる。敏郎の冷たい刃は正確無比に生ける屍の頭部を砕き、
彼らの全てを土に還していく。


「ヤッタランを起こせ。気の毒だがいつまでも唐揚げの夢をみせておくわ
 けにはいかぬ。一刻も早くここから離れなくては」


「あぁ、そうだな」


敏郎の背に背中を預けて、幸せそうに眠るヤッタランの頭を小突く。「ぶ
にゃ」と寝惚けた声を上げて覚醒した副長は、小さな目を幾度か瞬かせて
「あぁ、ピンチかいな」と一瞬で状況を理解した。


「アカンなぁ。食人星やったんかいな。こらヤバいで。トチローはん、ジュ
 ニアはどないしてん。もう喰われた?」


「喰われてない! 無事だ!!」


無事とは到底言えないほどほつれた姿でハーロックが戻ってきた。片手には
息が上がり、腰も立たない有様の零を引きずっている。


「着衣が乱れに乱れておるど」


敏郎が心底呆れた表情で溜息をつく。ハーロックは「うるさいなぁ」と赤面
し、大きく開いてしまった胸元を正した。


「酔ってたとはいえ本職軍人と格闘したんだ。このくらい軽い方だよ。ほら、
 零の酔いも醒めたみたいだしな。零、ハナシわかったろ。立てよ」


「ちょっと…待って…くれ。い、息が…整う……まで……」


ハーロックに腰を蹴り上げられ、零はへなへなと地面に手をついて喘ぐ。ボ
タンの飛んでしまったシャツを懸命に合わせ、土のついた髪を整える仕草は
何だかとてつもなく弱々しく、淫らな印象を与えてくる。

酔っ払いってみっともねぇなぁ、魔地は10分前までの自分を猛省した。


「零が滅茶苦茶になっておるではないか。ハーロック、ナニをしでかした」


「ナニもしでかしてません。くすぐり合いっこに勝っただけ」


小さくあかんべをしたあと、ハーロックはコスモドラグーンを抜き放ち、直
ちに敏郎を庇うように前に出る。置き去られた零は、それでもへろへろと四
つん這いになって落ちたしゃれこうべを拾い上げに行った。


「食人の星…か。気の毒に。ここにあるしゃれこうべも…あの屍体達も…そ
 んな結末など望んでいなかったろうにな」


零の手にすっぽりと収まるほど小さなしゃれこうべだ。恐らくはヒューマノ
イド・タイプ。それも女性のものだろう。ハンカチで丁寧に黒土を拭われて
いくそれを眺めながら、魔地はふと違和感を覚える。

周囲には、腐肉をまとわりつかせた生ける屍。零の手には、白骨化した頭蓋
骨。


「しゃれこうべ──? おい、敏郎」


「うむ。少しばかり…おかしいであるな」


戦闘をハーロックに任せ、矮躯の賢者がこちらに向き直る。


「食人星の犠牲者であるのならば、亡骸はあのようにアンデッドとなって利
 用されるはずではないか。それなのに、何故そのしゃれこうべだけがそう
 なのだ」


「そう、とは?」


零が不思議そうに小首を傾げる。「白骨化しておるということだ」敏郎が僅
かに表情を固くした。


「先程から見る限り──アンデッドとなって復活する兆しも見えぬ。何故で
 あろうか。零、それをこちらへ」


「あぁ。しかし、甦らないのであればそれはそれで良いのでは?」


「良くない。理に添わぬ」


固い表情のまま零の手からしゃれこうべを受けとり、敏郎が入念に観察を始
める。小さな手が360度しゃれこうべを回転させ、匂いを嗅ぎ、軽く振り
──。


「──模造品かとも思ったが…どうやら本物。それも、恐らくはアーシアン
 のXXであるな。白人種。死後軽く見て50年は経過しておる。年齢は…
 …ふむ、20代前半から後半か。割と美人である」


短く観察結果を述べる。「地球人…」と零が呟いた。


「こんな異郷の地で…気の毒に」


「事態はそれほど単純ではないど、零よ」


敏郎がことさら厳しい眼差しをしゃれこうべに向けた。暫し沈黙し、瞠目し
て何事かを呟いたあと、「そうか!!」としゃれこうべを宙に放る。


「恐らくはこの女性こそが最初の犠牲者! そして──この星を食人星へ 
 と変えた妄執の根源よ!! どのような未練…否、恨みあってのことかは知
 らぬが恐るべき執念。だが先んじて掘り出しておったのは僥倖、この場で
 断ち斬ってくれようぞ!!」


白刃が、嘶く。「待て!」と零が飛び出してしゃれこうべを胸に掻き抱いた。
剣閃が鈍り、零の髪と肩を僅かに掠る。白いシャツに滲んだ血の色に、敏郎
が刀を取り落とした。


「零! 邪魔をするでない!!」


「敏郎! いかに君が叡智の使徒であろうとも、それは決め付けというもの
 だ!! この遺骨は──私が地球に戻って身分の照合を。そしてしかるべき
 身内の手に戻さなければならない!!」


「何を馬鹿な! それを砕けばこの窮地を脱することが可能やもしれぬの
 だど?!」


「推測だろう。根拠も何もないというのに…遺体損壊を目の前で許すわけに
 はいかない!!」


「遺体損壊の罪などとうに犯しておる! 目の前を見よ!! 死者を討たねば
 こちらが死者の仲間入りだ。死にたくなければ斬らねばならぬ!!」


「向かって来る相手ならば! だがこのしゃれこうべは──」


「零、よく考えよ。この腐った亡骸の向かって来る状況で、その遺骨は異常
 なのだ。甦らず、完全に白骨化し、なおかつ50年の時を経てなお原型そ
 のままの姿を保っておる。恐らく、あのまま掘り進めていけば完全な骨格 
 が揃ったであろう。それこそが諸悪の根源なのだ!」


「予断は予断にしか過ぎない。敏郎、それは知恵ある者の傲慢というもの
 だ!!」


「傲慢で構わぬ! 誹りも非難も甘んじて受けよう。それを渡せ!」


「断る!!」


「よさないか!」 掴みかかって来たアンデッドの眉間を打ち抜き、ハー
ロックが視線だけを寄越した。


「零、トチローの言うとおりだ。お前も一艦の主たる男ならわかるはず。ク
 ルーの、背後に守る者のためになら、時に冷酷な判断も必要なんだ。トチ
 ローは俺達にとって最良の判断をしようとしてる! そしてその意志は
 デスシャドウの主たる俺の意志! あまりわからないことを言うと…お
 前を斬って捨てなきゃならなくなるぞ!!」


「あぁ、そうしろ! 元より私はデスシャドウのクルーではない。異物なの
 だ。君達の出した結論に従う義理も義務もない!!」


「零!!」


落ちた敏郎の刀を拾い上げ、胸に髑髏を抱いたまま零が旋風のように魔地や
ヤッタラン、そしてハーロックの脇を駆け抜けていった。魔地は慌てて周辺
に張り巡らせていた糸を引いた。


「零、待たぬか!! 納得がいかぬと言うのなら、あとで説明を──」


敏郎の静止の声を背中で弾き、その姿は瞬く間に鈍重な屍体を斬り拓いて春
霞の中に消えていく。



「……馬鹿者が……ッッ!!」



敏郎が、震える息を呑み込んだ。帽子のつばを僅かに傾け、「追わねばなる
まい」と一歩を踏み出す。


「待った」 ハーロックが片手でそれを制した。


「トチロー達はスペースウルフで先に戻ってな。出来るだけこの星について
 の詳しい情報を集めてくれ。それと…魔地、いざとなったらこの星をデス
 シャドウ号の最大火力で攻撃する。準備を整えて」


「最大火力って…それじゃあこの星は」


「あぁ。時と場合によっちゃあ宇宙図から抹消するかもな。あっちゃいけな
 いんだ。こんな星」



死者の妄執が息づく、食人の。



「星殺しの代償は高くつくぜ。それこそ、連邦軍人に任せた方が」


「わかってる。でも俺達は海賊だ。武勇伝が一個増える。それだけのことさ」


でも、零にはさせちゃいけない。鳶色の眼差しが鋭く零の駆けていったあと
を見据える。


「今や惑星は──1960年代にジェームズ・ラヴロックという作家が提唱し 
 た『ガイア理論』によって一個の生命体という認識が高まってる。星を消
 すということは、殺人と同義なんだ。いや、もっと多くの、それこそバク
 テリア一つの生命活動までもを完全に断つ、罪。これまでだって、銀河連
 合の判断で消された星がなかったわけじゃないけれど…どんな大義が
 あったって、命を消すこと、それそのものの重みが消えるわけじゃない」


「零にはさせたくないか。危険な星だと、議会に報告することも」


「零風に言うなら、そりゃ殺人教唆だよ。させたくないな」


「させたくない、か。そうだな。あれは大馬鹿であるが──あのままで良い」


追え。敏郎が踵を返す。ヤッタランが慌ててスペースウルフに向かい、魔地
は走り出したハーロックを援護するように糸を伸ばす。亡者を切り裂く刃の
道だ。桜の木々にも張り巡らせ、残していくハーロック専用機が害されるこ
とのないように結界を作り出す。


「戻ってこれるようにしたからな! ここまで戻れば、あとはお前のフェン
 リルで」


「わかった! 何かわかったら、通信入れてくれ!!」


銀糸が作り出した細い道を駆けて、ハーロックの背中が桜色の霞に消える。



「やれやれ…なんという宴だ」



発進準備の整った機内で、敏郎がきつく、眉間を揉んだ。




















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