これは、まるで遺書のような回顧録だ。


わたくしの友と、
わたくしの妻と、
何よりわたくしが愛した人との青春の記録だ。
まるで、死期を悟った老人のように、わたくしはこれを記すだろう。
けれど、この思い出達は決して絶望しているわけではない。
何故ならわたくしは、わたくしの生に満足して記すのだから。
ただ一つの真実を。

これから戦うことになるであろう友と、
既に逝ってしまった妻と、
何より、遠く離れた星で明日への希望を繋ぐ愛しい人との真実を
後の世に残すために。

人は、初めから為すべきことを背負って生まれてくるという。
ならば、わたくしはきっとこうして語るために生まれてきたのだ。

今も、地球で己が信念を貫こうとする友と、
私への愛を貫いて逝った妻と、

何より、病に膿んでなお、
笑ってわたくしの元を去った愛しい人との日々を語るために。



今は、遠く肉体の距離を隔ててしまった愛しい人よ。
君がこの記録を生涯手に取ることがないことを、わたくしは僥倖に思う。
何故なら君は、わたくしを清廉潔白と呼んだからだ。
わたくしの意志を、わたくしの生き方を、美しいと言ってくれたからだ。
この期に及んでまだ君に良く想われようとするわたくしの浅ましさを知って
いたなら、君はわたくしに手を差し伸べることさえしなかっただろう。


真実、誰よりも清廉潔白だったのは他でもない、君自身だったのだから。


君が去り、今このような時を迎えて、

(多分、これが最期の戦いになると思う。既にわたくしは勝利することすら求めていないのだが)

わたくしは初めて打ち明けよう。



愛しい人よ。わたくしの最上の友よ。
わたくしは、ずっと君を愛していた。それは、友情と呼ぶにはあまりにも
歪んでいて、あまりにも正常ではない形で。


傍らに立つ君の姿を、
思案に暮れる君の横顔を、
わたくしはずっと見つめてきた。


時には、非道な妄想さえ伴って。


君に触れる時のわたくしが、どんなに胸をときめかせたか、
どんなに狂おしく心を締めつけたか、
君がそれを知らないままでいてくれたのは幸いだ。


もう一度、はっきりと明確に記そう。わたくしの最上の友よ。

わたくしの“エルダ”、大山十四郎。

わたくしは、君を愛していた。否、今も愛している。

青春の日々から、一度も色褪せることなく、今も。


学生の時、教授から出されたレポートに疲れ、眠る君の唇にただ一度触れたこともある。


本当に、一度だけ。
その罪で地獄に堕ち、
永遠に君の魂と分かたれることになっても、
わたくしは君の唇を忘れはしない。


深い──罪だ。わたくしは何と薄汚れた人格であることか。


けれど、あの時の思い出はこうして目を閉じるだけで容易く想起することが
出来る。

友と、
妻と、
君と過ごした青春の記憶と共に、何度でも。



愛しい人よ。
わたくしはわたくしの心の中で、そうして何度も君に口付けたのだ。


今、生涯最後の戦いに臨むこの時でさえ。



目を、閉じれば──……。
























●これから書く予定の長編の予告です。いや、オープニングかな。親父世代の学園モノ。↑の文章とはとても相容れないへっぽこコメディーの予定ですが。
 

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